フォーラム二日目の「こころホール」では,全国から集まった手すき和紙産地の職人,和紙関連業界の方々らによって「産地情報」「原料情報」「和紙の未来を考える」という三本の柱をテーマに,手すき和紙業界のホンネを赤裸々に語っていただきました。


◆16日のCONTENTS◆

あいさつ

 全和連副会長・吉田泰樹氏(越中和紙)
  思い・悩み・提言などを聞いていきたい。

産地情報

 越前和紙理事・山田益弘氏
  機械漉きに比べて手すき和紙の人気は根強い。
 黒谷和紙・福田清氏
  後継者育成に頑張っていきたい。
 美濃和紙・臼田登一氏
  美濃和紙ブランドで新しい展開。
 因州和紙・塩彰一氏
  書道協会・紙友会・和紙組合が共同でイベントを企画。

原料情報

 烏山和紙・福田弘平氏
  楮の生産者確保が困難ゆえに那須楮を生産開
 土佐和紙・栄枝昭一郎氏
  高知県から和紙づくりをなくさない努力。
 サンワールド・酒井忠雄氏
  良質な外国産原料を供給したい。

和紙の未来を考える

 越後門出和紙・小林康生氏
  生活を支える地酒「久保田」のラベルと百姓としての仕事の中の紙漉き。
 
森木ペーパー・森木貴男氏
  海外での和紙に対する認識と商品や情報の供給について。
 
小津和紙(東京日本橋)・一瀬正廣氏
  高齢化社会ゆえに趣味の世界は市場としてひろがる。
 
蛭谷和紙・川原隆邦氏
  たった一人で守る蛭谷和紙の若き灯火。
 小川和紙・久保孝正氏
  化学薬品や木材パルプを使ってもいい。買手の裾野を広げる事も大事
 
越前和紙理事長・山田益弘氏
  和紙の価格ラインは和紙組合で守る。
 紙の温度株式会社・花岡成治氏
  和紙だけでなく「紙を買いに行く機会」が減少中。
 上村紙株式会社(楽紙館)・上村芳蔵氏
  紙そのものの文化を全面にだしていきたい
 TAKIO TRADING・滝尾亮平氏
  輸入紙のなかでもプライドというものがある。
 因州和紙・中原剛氏
  和紙をとおしてスペインの美術学校と交流。
 ボランティアスタッフ・矢部和仁氏(印刷業)
  ボランティアスタッフからのメッセージ。
 (株)加徳・加藤幸雄氏
  もっと良い商品を取り扱いたい。
 伊勢和紙・中北喜得氏
  私たちは各産地でそれぞれの文化を創造している。
 
閉会の辞

 全和連副会長・房安光氏
  一番中味の濃い研修会でした。

 総合司会・阪田良枝氏(全和連事務局長)
 

 

全和連副会長・吉田泰樹氏

研修会の司会者 

吉田泰樹氏(左)
中北喜得氏(右)

 

「おはようございます。ご紹介いただきました,富山県越中和紙の吉田と申します。私の隣は三重県伊勢和紙の中北さんです。こういった場所は不慣れなものですし,ましてや,私自身,京都に来てから風邪をひきまして,いつもはもっと美声なのですが(笑),今日はガサガサな声で申し訳ないです。よろしくお願いします。

 では,早速,はじめさせていただきたいと思います。まずは各産地からの報告,そして国内産と外国産の原料についての情報などをお話願えればと思います。
 その後で,和紙の未来を考えるという,非常に漠然としているテーマですが,そのなかから,作り手や使い手からの思い,悩み,提言などを語り合っていければと思います。

 手すき和紙の世界はとても狭く,各産地の方々は一人ひとり頑張ってらっしゃると思いますが,この厳しい状況の中で,作り手と使い手が一つになって不況を乗り越えていく。あるいは明るい和紙の将来を築いていきたいと思います。
 企業秘密的な事もあるかもしれませんが,ザックバランにお話いただければと思います。
 
 それでは,早速,産地情報をはじめさせていただきます。まず,越前和紙の山田理事長,越前和紙の現状等についてお聞かせください。」

 


 

◆コメント順に抄録を掲載いたしました◆

越前和紙理事山田益弘氏

機械漉きに比べて
手すき和紙の人気は根強い。

 

「みなさん,おはようございます。最初に指名されましたので,心臓がバクバクしておるわけでございます(笑)。

 昨今の状況は非常に厳しいものがございます。越前の状況を申し上げますと,昨年(19年度)は18年度と比較しますと,やや減少。数値的に申しますと2、3%の減少でございます。

 いっぽうで根強い人気もございまして,他の物が大変不況で,たとえば機械漉きの減少と比べますと,手すき和紙の減少は非常に少ないです。一安心とまではいきませんが,根強い需要に支えられてきております。その反面,原料の高騰といったことから,利益率は年々悪化しているのではないかと思われます。

 みなさん新しいものを開発したいというお考えがあるようです。それ自体が非常に難しいことでもありますが,昨今の状況のなかで印刷に適応できるものやインクジェットに対応できるもの等,研究が進められてきております。こういった事例に対応できないと,やはり需要は減少していくのではないかと思われます。
 (中略)
 簡単ではございますが,越前からの報告は以上です。後ほど,ご質問等がございましたら,お聞きしたいと思いますので,みなさま,よろしくお願い申し上げます。」

 

黒谷和紙・福田清氏

後継者育成に頑張っていきたい。

 

「おはようございます。黒谷の福田でございます。長い間,こうして参加させていただきまして,そろそろ退いたほうがいいかなとも思いますが(苦笑),もう少し頑張らせてもらおうかなと思っております。

 昨日のシンポジウムでは非常に良いお話を聞きましたし,岡田先生からは我々にとって非常に厳しい意見もございましたが,しごく当然の話でもありました。我々の手すき和紙の技術は,1500年にわたって全国各地の産地が和紙の歴史を守ってきたわけです。これは大変立派なことですが,和紙そのものは「伝統文化」の継承だけでなく「産業」が伴わなければ継承していくことはできません。その両輪を進めていくためには何をすべきかが問われるわけであります。(中略)
 
 私たち黒谷和紙の状況につきましては,まず原料のことから申し上げます。現在,国内産の原料が減ってきておりますが,黒谷においては,15年程前から地元産の楮を農家の方に取り組んでいただき,昨年や一昨年の実績では,全生産量の50%ぐらいを綾部市内で生産された楮となっております。残りの30%は近畿圏で生産された楮で,全体の70〜80%は近畿圏内の楮を使用しております。その他は三椏をはじめとする各原料を用途に合わせて使い分けてきております。

 ところが,楮の生産者の高齢化もあり,また60歳以下の方々は,なかなか取り組んでくれないということから,畑はあっても耕作者がいないのでは大変なことだと思わずにはいられません。平成20年度の計画といたしましては,綾部市の農林課や京都府の農林課に働きかけをして,いろいろと進めていこうと考えております。その一つとして,綾部市内にある廃校になった小学校を利用しまして,「工芸の里」を開いております。

 また,このところ楮の畑を鹿が食い荒らすようで,楮の生産者が非常に困っている様子です。私たちも,ただ「作ってほしい」というだけはダメですので,そういった鳥獣対策も,市や府に働きかけていきたいと思っておるわけです。(中略)
 
 黒谷の漉き屋さんはどんどん高齢化しまして,若い人がほとんどおりません。組合員も減ってきておりまして,遠からず黒谷の組合は解散しなければならないのではないかという状況になってきております。そういった現状がありますので,地元だけでなく他府県から来ていただいて,現在10名の方々が現役といいますか技術屋になっているわけです。

 黒谷では,和紙職人を志す人達に2年間の研修をしてもらった後,黒谷和紙の技術者として認め黒谷和紙へ協力していただいています。先ほどお話しました10名も非常に若く,技術もだんだんと向上しております。昨日も林という者がシンポジウムに出させてもらって頑張っておりますし,先ほどの10名の他にも,今年の正月までに新たに2名,今年におきましても四月から2名の方が後継者育成に入りたいという希望があります。そういったことから,市の理解を得まして,月2万円で2年間の補助金をいただくことになっております。また組合にも補助しようということで,後継者育成に頑張っております。

(※京都園部町の伝統工芸大学についての紹介されました。略)

 最初に申し上げました和紙を「産業」としてどう位置づけていくかにつきましては(中略),外国産の楮を使ってもよいですし,使う人それぞれの用途に適した和紙を提供すればいいのではないかと思います。それらを踏まえて「産業」としての和紙を継承していけばいいのではないでしょうか。」

 

美濃和紙・臼田登一氏


美濃和紙ブランドで新しい展開。

 

「おはようございます。美濃和紙の臼田と申します。何か明るい話題がないかなと思っておるわけでございますが,みなさんご存知のとおり昨年の四月から産地ブランドと申しましょうか,地域ブランドが法制化されました。遅まきながら美濃和紙もそれに取り組もうと思いまして,それでは新しくブランド向けの組合を作ろうということで,美濃和紙ブランド共同組合を設立しました。そして先月に意匠登録をした次第でございます。(中略)
 
 和紙の職人さんも高齢化しておりまして,あと5年10年かなと言いながら続けておられる方もいれば,若い人も7名程入ってきておりますが,どこまで根気づよくできるかといった懸念も正直言ってございます。が,その中から3名が正規の組合員になりまし。(中略)
 
 現在,美濃和紙ブランドには,手すき和紙の職人を1としまして36名つまり36社が入っておりますが,ようやく動き始めたところです。(中略)
 
 後継者と一口にいっても,紙を漉く職人だけではなく,原料や道具を作る人の後継者のことを考える事も大事であります。」

 

因州和紙・塩彰一氏


書道協会・紙友会・和紙組合が
共同でイベントを企画。

 

「おはようございます。鳥取での近況ということですが,先ほど3つの産地の方々が仰られていたことと同じような状況です。(中略)
 
 今回,この大会には問屋組織の因州紙友会さんと来ております。ここ三年間,書道協会さんと紙友会さん,そして和紙組合が共同で,年はじめに書き初め大会を行なったり,いろんな会合でコミュニケーションをはかるなどして,今後,因州和紙をどのように発展させていったらいいか模索しつつ頑張っていきたいと考えております。」

 

 

 

◆コメント順に抄録を掲載いたしました◆

烏山和紙・福田弘平氏

楮の生産者確保が困難ゆえに
那須楮を生産開始

 

「みなさんおはようございます。全国手すき和紙連合会と申しましても,私は東日本ブロックからの参加でございます。今回,東日本ブロックから参加されているのは,栃木県,山梨県,埼玉県,新潟県といったところです。静岡から北側はすべてが東日本ブロックというわけですが,そのなかでも一番北から来ております福田と申します。

 私どもの地は那須楮という楮の集散地でございまして,この那須楮について少し話をしていきたいと思います。那須楮はおよそ全国各地に売られていると思いますが,茨城県の大子町というところが那須楮の本場と言われておりまして,私たち烏山は本場から少し離れておりますから準本場と言ってほうがよいかと思いますが,本場として話をさせていただきます。

 昨年は天候の不順によって,大きく伸びたところと伸びなかったところがあり,品質の差が大きく,また品質が良くないというのが現状でございます。生産量については前年と同じ位になるかと思いますが,今年は1000貫(※3.75 kg/1貫)を切ると言われています。その理由として,去年は楮が余りました。つまり売れないところがありました。それが理由で売れないところは生産を控えたということになります。楮の金額につきましては,10貫目が安いもので13万円から16万円ぐらいです。
 (中略)
 こういった現状から,我々としましても楮の生産者を確保するのが難しい時代になってきました。そこで,烏山和紙では,昨年から地内で楮の生産をはじめました。業者さんまかせではなく,自分達でキチッとしたものを作ろうと考えております。本場物の生産量の減少だけでなく,雑な楮が増えているのが現実でございますので,これから那須楮を育てていってもらうためには,いくらかでも高く買っていただくことが大切なのかなと思っております。
 (中略)
 この那須楮を,これからいかに残していくかについては,ここに集まっておられます全国の産地の方々の協力が必要かと思います。何卒よろしくお願いします。(中略)烏山という地では,昔は1000軒ほどあった紙漉きが,現在は私のところ1軒だけになりました。1軒しかないという寂しさもございます。
 (中略)
 烏山和紙では6つの大学と相互交流協定を結んでおりますので,大学との話し合いも進めながら,新しい紙に関係した物づくりの未来を模索しております。若い人達が私たちとの交流をとおして新しい紙づくりをしていってくれればなと思います。(後略)


土佐和紙・栄枝昭一郎氏

高知県から和紙づくりをなくさない努力

 

「高知の栄枝です。よろしくお願いします。高知では,現在,土佐和紙保存会がございまして,それぞれの生産者ご子息さん方にも,例えば日曜日に集まっていただいて,高知県から和紙づくりをなくなさいようにしていこうと努力しております。

 本年の生産量については,多くの生産者があるためハッキリとした数字はつかめていませんが,だいたい4000〜4500(貫)になるのではないかという予想はしております。
 (中略)
 私はこれまで50年以上和紙の原料を扱っていますが,その年に余った原料は倉庫に入れ,毛布をかけ,その上にシートをかけます。そうして空気が入らない事で年がかわっても,あまり質の変化がありません。多少は水分が減るかもしれませんが,大きな変化はないようです。(中略)とにかく,高知県の原料を減らさないように努めておる次第であります。」


サンワールド・酒井忠雄氏

良質な外国産原料を供給したい

 

「サンワールドの酒井と申します。いつもお世話になっております。外国製の楮について説明させていただきます。

 35年位前になりますが,全国手すき和紙連合会の方々と,タイ楮の視察をしたことがあります。そのとき「何とか品質が良くならないのか?」「安定した数量を確保できるのか?」ということで,タイでは王室が権力を持っておりますので,大使館を通して働きかけたことがあります。今はタイの楮を使った紙は世の中に充満しておりますが,その当時,チェンマイでは手つかずの楮がいっぱいあるのに使わないのか。そのPRを行ないました。
 (中略)
 ピーク時には何百トンものタイ楮が日本に入っておりましたけれども,現在はピーク時の20%まで低下しています。その理由は悲しい話ではありますけれども,日本において和紙が生活必需品から遠のいていったことにあります。
 (中略)
 タイにしましても中国にしましても,いつまでも後進国ではありません。経済が発展してきているため,だんだんそういった仕事をしなくなってきています。このところ茶色い皮が特徴の粗悪なラオスの楮が出回っておりまして,タイとラオスは同じ植物圏なのですが,(一年に)2回も収穫するものですから,バチが当たりまして(紙にしたときの)強度が落ちてしまっています。

 タイでタイの楮を生産し続けていくというのは,日本と同じように難しいですね。経済状況がかわってきていますから,何十年も前のままというわけにはいかないのです。そのためにラオスの楮がシェアのほとんどを占めるようになってきました。これではまずい。何とかしてタイの楮を集めたいということで,たくさんの量はできませんが,20トンか30トン,タイ楮だけを扱う為の人の確保を心がけております。

 (参考資料にありますとおり)手つかずの楮林がたくさんあります。(中略)私どもの考えとしましては,「安かろう悪かろう」ではなく,良い物を適正な価格で供給していきたいと考える次第です。そのほうが使っていただく方の処理の手間が少なくて済みますし,なにしろ人手不足の時代ですから,(手間が省けるということは)コストを削減できるという評価をいだたきながら,使っていただければと思っております。海外のものにつきましては,安定供給がなければ使えませんし,来るたびに品質が違うようではやりきれません。
 (中略)
 需要が減ってきましたので,少量でも良い物を扱いたいと考えがかわってきました。
 (中略)
 海外の和紙原料を使っていただくときは,(国内原料の)代用品としてではなく,それぞれに特色があるわけですから,適性を見定めて使っていただきたいと思います。結論から申し上げますと,現状の和紙需要であれば,楮も三椏も原料(の確保)としては何の心配もありません。ただ需要が減りますと,現地もめんどくさがって生産をしたがりません。ですから,今年いらないと言うと来年は生産しないということが,私にとって一番の心配です。
 (中略) 
 海外の和紙原料については適性を見定めて利用していただき,もう一度「生活必需品」としての和紙をめざしていただきたい。これは大変なことでございますが,アートとしての和紙だけでなく,やはり生活必需品として和紙の産業についても,もう一度リターンマッチできればということを念願しまして,みなさま方のお手伝いができれば満足でございます。(後略)

 

(※休憩時,海外の楮,三椏の皮がステージ上に置かれ,多くの参加者が手にとて見る。)

 

◆コメント順に抄録を掲載いたしました◆

越後門出和紙・小林康生氏

生活を支える地酒「久保田」のラベルと
百姓としての仕事の中の紙漉き。

 

「新潟から来ました小林です。どうこう言っても,うちは「久保田」のラベル(※新潟の有名な地酒「久保田」のこと)が生活を支えていることは間違いございません。今年は,そのラベルの和紙づくりが発売以来23年目に突入します。

 そこで,今,楮のほうでいきますと,久保田のラベルだけで,実に2000枚以上使っているはずです。紙が厚いものですから,常時,四漕は動いてないと間に合いません。従いまして,七名が,久保田のラベル紙づくりの作業にあたるといったところです。
 そのほかにも80種類ほどの通常商品というものを作りますが,逆にいいますと生活の糧にならないのと,多くの産地も同じかと思いますが,いろんな素材に取り組みますと,なかなか製品の質が一定にならないことなどが実態としてあるため,久保田のラベルでカバーしているというのが現実です。

 当社にとっての一番の喜びは,使ってくれるお客さんが喜ぶことこそ一番かなということで,お客さんの要望にできるだけ応えるということで紙を漉いてきました。そのために白くカルキで漂白したり,お客さんの希望にそってやってきたわけですが,あるとき自分が選別しているとき,10年程経った紙が,何が原因かハッキリとはわかりませんが,カルキの塩素が抜けきれていなかったのか,斑点みたいなものが紙の中に発生しているのを自分が漉いたと記憶している紙で生じていることを知りました。それからいろいろ考えるようになりまして,お客さんの希望に応えるのは大事だけれども,和紙の生命ということで言えば長期にわたる保存が大きな特徴になるわけです。それを阻害してまで,いろいろといじらないほうが良いのではないか。従いまして,今日,化学的なものは,いっさい扱いません。
 (中略)
 現在,楮を栽培しておりますが,自分で育てると,楮が可愛くなってきますから,その楮を化学的なもので弄(いじ)くりますと,楮がもだえ苦しんでいるように見えるんです。それが嫌なものですから,今現在は,完全に楮が成りたがっている紙のほうを基本にしています。楮が嫌だということはしません。自然の中で育った楮を,できるだけ自然の形で紙にしていくのが我々の使命と思っております。ところが,お客さんはわがままだから,滲(にじ)むとか滲まないとか,いろんな要求をしてきますが,自然からできた楮というものは,お客さんが好むような真っ白になったり,好きなようにはなりません。ですから,お客さんに,うまく使いこなすよう(紙の特性を)察知してください。もし使いこなせないようであれば仕方がないです。自然からできた楮紙は自然の風合いを生かして,紙の素性を生かした使い方をしてくださる作家さんが私たちにとって嬉しいお客さんであり,逆に虐待して使われる方には嫁に出したくないというのが正直なところです。
 (中略)
 (高齢化が進む集落がどんどん増えてきて)活性化をやるというよりは,ホスピスみたいな,もう何も言わないでくれ,このままここに住んで死んでいきたいと。もう事業もやりたくないといった集落もけっこうあります。こういった現象が,昨今の紙の事情と妙に重なって見えるわけです。なぜかと言いますと,たぶん紙だけじゃなくて,漆ですとか木工品とか日本の自然と対話している産業や地域が,現代の文明の中に飲み込まれてグローバル化してきております。ですから,一つの地域だけでどうのこうの言うのが許されない時代になってきていて,紙という切り口だけで解決するのは難しいのではないかと思っております。

 自分が生まれ育った地域に誇りを持ち,その良さを理解してもらうにはどうすればいいのか。そして,その地域の中で,たとえば私の場合,自分達が食べるだけの量ではありますが,野菜や米なども作りながら,百姓としての仕事の中の紙漉きをやっていると。職人の側の立場だけでなはく,農家の側の紙を俺は作っているんだなあと,このところ思うようになりました。今までは職人のような気で生きてきましたが,根っこをたどっていくと,どうやらそうではなくて,自然の中から物を取り出す百姓の仕事の中の紙漉きという部門が自分の仕事と考えております。おそらく全和連あるいは私たちがやらなければならないことは,紙という切り口だけでなく,伝統産業全体にかかわる底辺が同じ問題をかかえているわけです。要するに社会が自然と乖離してしまっていますので,自然と対話しない,それを担う気運がないというところに一番問題があると思います。自然とかかわる人がネットワークを組みながら,中央に対してアピールしたり訴えたりするような活動が必要ではないかと考えております。」


「生紙便」(ニュースレター)の発行(年4回/920円<一年>)についての要約。
「(中略)和紙を使いこなせる目の肥えたお客さんが減って,極端に言えば文句を言ってくれるお客さんがいなくなった。いくらこだわりのある紙を漉いたとて必要性がなくなってしまうので,独りよがりで終わってしまう。生産するだけでなく,使い手とともに成長し,交流することによって,両者が一緒に成長するためにニュースレターを発行している。現在500部近く発行。和紙のことは事細かく書かず,農村の現状や季節のこと,自分の中で新しく見えてきたことが主な内容となっている。和紙のみならず根本的な部分から考えていかなければならないという危惧がある。」

 

森木ペーパー・森木貴男氏

 

海外での和紙に対する認識と
商品や情報の供給について

 

「森木ペーパーの森木です。海外での和紙に対する認識につきましては,ファインアートつまり美術紙として捉えられています。最近ではアートもデジタル化ということでインクジェット用のプリンターに対応する紙はないかという引き合いが多く,昔ながらの木版画や修復用紙の引き合いは少なくなってきているのが現状です。
 (中略)
 ヨーロッパにおいてはアートに対する関心が高く,修復用紙をはじめ需要は引き続きまだあります。そこで自分なりに海外のお客さんとのコミュニケーションをはかり情報発信をやってきた結果,良い紙を探しているお客さんが多いなと痛感しております。そこでやはり大切なことは,お客さんに正確な情報を与えること,原料やプロセス,生産者等そういった情報を知りたがっていることを感じております。ですから,和紙生産者のみなさま方には,和紙製品のっみならず,原材料等の情報を一緒にくだされば,売り手としましても助かるわけであります。
 (中略)
 海外のお客さんのなかには日本産の楮で作られた和紙は高くて手が出ないという方も多くいらっしゃいます。ですから,日本産の楮だけでなく,タイ楮の和紙を提供すること等が,お客様の立場に立ってお役にたてることかなと考えます。」

 

小津和紙(日本橋)・一瀬正廣氏

 

高齢化社会ゆえに
趣味の世界は市場としてひろがる。

 

「小津和紙の一瀬と申します。私どもは,いかに多くのお客様にご来店いただきながら,和紙について幅広く理解していただればと思っております。店舗としましては,売り場だけでなく,ギャラリー,和紙の資料館,文化教室や紙漉き体験の工房を併設しております。(中略)
 
 できるかぎり和紙にふれていただく機会を増やしながら,一人でも多くの方に和紙への理解を深めてもらえればと考えています。(中略)高齢化社会になってきておりますが,趣味の世界は,今後,ますます市場としては広がっていくと思われるので,和紙の今後も期待できるのではないかと考えております。
 (中略)
 先ほど森木さんもおっしゃいましたが,生産者から原料や製造方法等の情報をいただければ,特に一流の先生方も紙を買いに来られますので,売り手としましては,非常に助かる次第であります。」

 

蛭谷和紙・川原隆邦氏

たった一人で守る蛭谷和紙の灯火。


「富山県で紙を漉いている川原と申します。うちの産地は産地といえるような状況ではなく,40年前から,うちのお師匠さんが一人でやっていて,そこを辞められた後,ボクが入って続けています。そのために生産量に非常に少なく,楮やトロロアオイといった原材料もすべて山から取ってきて手づくりでやっています。

 このように,ホソボソとやっている産地ではありますが,今の日本では,そういった産地があっても見捨ててしまって,「残念だね」と一言いう風潮になっているわけですが,残念ということを知っていながら辞めていくのはもったいないと思います。凄く質や評判が悪くて辞めていくのは仕方ないことだと思いますが,だんだん使い手の見る目がなくなって良い物を作っていても辞めていかざるのを得ないのだなと,自ら和紙の世界に入っていって実感しています。

 一人でやっていますと,すべてにおいて,やはり生産量は凄く少ないですし,楮の栽培等もままならないので,近くの産地から楮を譲っていただいたりしながら,何とかやっています。やはり土地柄,できれば地元に近い楮で漉きたいという思いがありますし,ボクの産地の場合は楮紙しかやっていませんので,作っている姿勢そのものが伝統産業においては大事なのかなと思うところです。
 (中略)
 何百年も続いてきた和紙づくりですから,これからもそのままの姿勢を残していくことは,凄く大事だと思い一人でも多くの人に理解していただきたいと思っています。
 現代は情報が容易に入手できますが,身近なものしか手に入れようとしません。うちの工房に来られる方はほとんどいませんし,作っている枚数も少ないので販売しているお店もほとんどなく,知ってる人のみ買いにくる状態です。和紙業界全体もうちと同じ状況と思いますが,このところ凄く安価なものが出回っていまして,和紙に似たような紙で済ませる人も多く,正直言って紙として勝負するのは難しいかなと思っています。ですから,作っている姿勢を知ってもらいつつ比較したうえで,蛭谷和紙の存在や地域性というものを理解してもらいという気持ちで活動しております。

 ここで言うのも変な話ですが,今まで一年間,紙漉きだけに従事していましたけれども,この四月からは森林組合で働いて,山で仕事をして,山の仕事が終わったら冬の間に紙を漉いて,農閑期の仕事として,もう一度,紙漉き本来のスタイルに戻していこうかなと考えています。ここに来ておられる方のなかでは.どちらかというと小林さん(越後門出和紙)と同じようなスタイルに似てるのかなと思いますが,そのようなスタイルで地域の文化としてやっていきたいという気持ちがあります。今,地元の小学校や中学校でも授業での書き初めがなくなってますし,各家庭の障子紙も,毎年一回は張り替えるという家庭は,どんどん減っていってると思います。そういったことを見直すことを,全国的にではなく,地元にスポットを当てて理解していただく活動を進めていければと思っています。 (中略)
 少しずつ地元でも,そういった姿勢を評価してくださる方がいらっしゃいますし,県外からも見学に来られるかたもおられます。海外の方は朝から晩までみっちりと見学する方もいて,少しずつ理解されているのかなと感じてはいますが,生活していくというのは厳しいもので,そこをどう耐えながらやっていくべきかを考えながら紙を漉いています。
 こういう弱小な産地なので,これからもよろしくお願いします。」

 

小川和紙(埼玉)・久保孝正氏

化学薬品や木材パルプを使ってもいい。
買手の裾野を広げる事も大事

 

埼玉県小川町の久保と申します。先ほどご紹介がありましたとおり,先日NHKの「小さな旅」という番組で取り上げてもらいましたが,おそらく,こちらに集まっておられます方々も紙漉きをやっておられるということでメディアに取り上げられることもあるかと思います。

 今回,参加して感じたことですが・・・地元・埼玉の酒蔵の人から言われたことをご紹介したいと思います。

「<伝統>とか文学的な言葉で取り上げられると,終わりだね」

 それは,その酒蔵さんが化学を専攻された方なので,そういった厳しい言い方をされたような気がしますが,和紙にしましても.取り上げられ方が情緒的すぎますと,実際の商品と,商品のイメージや使い勝手とが乖離してしまう。そういった意味合いで,酒蔵さんもおっしゃったのだと思います。

 今回,取り上げられましたNHKの「小さな旅」。そのなかで私が作ったのは,木灰で煮て,クレゾールに浸けない生のトロロアオイを使って紙を漉きました。何故そういうことをやったかと申しますと,まず,小川町という産地は東京に近いです。ですから,おそらく他の産地よりは多くの見学者がいらっしゃるでしょうし,その方々に製品の説明をさせていただくのですが,ここにいらっしゃる小林さん,ここには来ておられませんが美濃の若手の方々がやっておられます「成分表示」,これを私のところでも見学者に説明しています。

 小林さんのところではこだわってらっしゃいますが,うちはハッキリ申し上げましてタイ楮を使います。木材パルプも使います。そのいっぽうで四国の楮も使います。また,地元の楮もある程度使います。そういったことを説明しまして,わりとショックを受ける方も多いです。つまり,これまでの和紙の取り上げれ方が,わりと文学的な表現が多かったので,紙の中にパルプつまり洋紙の原料やタイ楮が入っているなんて信じられない。あるいは苛性ソーダなんて劇物が入っているなんて知らない。塩素漂白されているなんて知らない。そういう方がけっこういらっしゃいます。

 今回,NHKで取り上げられましたことは,いわゆるシックハウス症候群,いわゆる壁等に使われている化学薬品が身体に悪い影響を与えると。そういったことに対応できる家づくりをやっている人に対して,クレゾールや化成ソーダなどを使わない紙づくりとして取り上げられました。

 そういった形で木灰などを使うと「素晴らしいですね」と言った取り上げられ方をします。しかしながら,今回,私が感じたことは,トロロアオイの保存液に使われるスレゾールは、シックハウス症候群などでは引っかかってしまう成分で,それではダメだということを業者さんから聞いてクレゾール抜きで紙を漉いたわけです。先ほど川原さんがおっしゃられましたが,いろいろこだわって「うちはこういうスタイルでやっています」といったアプローチで宣伝もいいかもしれませんが,化学的なアプローチで宣伝するのも,もう一つのあり方なのかなという気もしました。

 それをするにあたって大事なことは,森木さんもおっしゃられていた原料の表示です。国産の材料にこだわって紙を作っていれば原料表示も非常にやりやすいのかもしれませんが,私のようにいろんな化学薬品を使う紙屋さんというのは,わりといらっしゃると思います。私が原材料表示をしたとき,父が嫌というようなリアクションをしました。ただ,実際にはいろんなお客さんが来て説明していくなかで,たとえ化学薬品を使っていたり機械を使っていたりしても,きちんと表示していかなきゃいけないと思っています。
 これから先どうなっていくかという話ですが,私のスタンスとしましては,古くからある伝統的な製法で紙を作っていくのも大事ですが,化学薬品を使ってもいい,木材パルプを使ってもいい,買ってくださる方の裾野を広げていく事も大事だと思っています。それで,うちの紙では対応できない,もっとこだわりを持った紙がほしいのであれば,他のところの紙で対応していただくしかないと考えるところです。
 (中略) 
 先ほど道具の話がありましたけれども,今,小川町では和紙の道具を作る職人は一人もいらっしゃいません。道具につきましては,他の産地から仕入れてますし,じつは中国製だったりします。そういったことも踏まえて,和紙とはいえ,原材料には外国産の物が使われているということを伝えていかなければなりません。いっぽうで,紙の原料も道具も日本でまかなっている産地があることも忘れてはなりません。私自身,いろんな材料に手を出してはいるのですが,どれが適したものなのかキチンと見定めて,和紙づくりに取り組んでいきたいと考える次第です。


 

越前和紙理事長・山田益弘氏

和紙の価格ラインは和紙組合で守る。

 

最近,どこの産地でも同じでございますが,値上げということに関しましては,先方の都合によってなかなかできないという現実がございます。そんななか,奉書にかんしては,和紙組合が生産者から買いあげまして,和紙組合が窓口になって得意先へ販売するという形をとっております。で,一軒一軒,手すき和紙の方々が交渉されますと,値切られたり弱い立場に陥りがちなので,奉書にかんしましては,原料を組合で買い上げて,また紙を販売される方も協賛金を積んでいただき,その方々だけに販売します。
 (中略)
 昨年の三月になりますが,奉書については10%の値上げをいたしました。その他の紙にかんしましても,去年の暮れに値上げをしましたし,また産地全体では機械漉き和紙のほうが生産量も多いわけですが,それらにかんしましても値上げを実行しております。原材料の高騰による値上げのため,先方様にも十分にご理解をいただいておりまして,だいたい10%から15%までの値上げを了承されております。
 (中略)
 昨年,福井におきましては,継体天皇誕生即位1500年という記念すべき年にあたっております。といいますのも,この27代天皇が越前から誕生しておられるわけであります。地方から天皇が誕生するというのはほとんど例がないわけでありますが,西暦507年に継体天皇が越前で即位されていらっしゃいます。先ほど福田さんも和紙には1500年の歴史があるとおっしゃっておられましたが,これを機に越前としましても,1500年前の古代の紙づくりに挑戦しました。
 なぜ挑戦したかと申しますと,やはり,その当時はネリがなかっただろうと。どうしてネリがないのに紙が漉けたのだろうということでございます。
 西暦700年代,奈良の正倉院に記録として和紙が残っているわけですね。和紙としてではなく記録として,美濃の和紙ですとか越前の紙が703年とか710年とか,その当時ですでに紙が残っております。その意味では,もう1300年以上も昔の紙が現存しているわけですね。それらを顕微鏡などで繊維の組成(素性)を調べまして,それよってできるだけ近い和紙を作ろうということで,約100日位かけて試行錯誤をしながら,10月頃に完成したわけです。楮を主に使いました。
 じつは2世紀頃に書かれた中国の漢書のなかで,日本人は楮の繊維を編んだ物を衣服にしていたという記録が残っています。ということは,日本人は古くから楮の繊維を使っていたことがわかります。
 (中略)
 ネリがないにもかかわらず西暦710年に作られた紙を見ておりますと,非常に地合がいいわけでございます。どうして作ったのだろうということで結論を申し上げますと,楮の繊維を5ミリぐらいに細かくカットします。そして,それを越前の場合は石臼でひきまして,それで紙を漉きましたところ,700年代に作られたものとほぼ近い紙ができました。ネリのない紙を漉くという非常に貴重な経験をしたわけでございます。
 古代の紙づくりにかんするご質問等につきましては,和紙組合をつうじてご返答を申し上げたいと思います。

 

紙の温度株式会社(名古屋)・花岡成治氏

 

和紙だけでなく
「紙を買いに行く機会」が減少中。

 

「名古屋で紙を販売しております紙の温度の花岡と申します。私どものお店が愛知県近郊で知名度が上がってきていると勝手に思っておりますが,では,来てくれたの?と尋ねてみますと,足を運んだ事が無い人が多いです。では,なぜかと問いただしてみますと「紙を買う用事がないんだよ」と言う方がものすごく多いです。
 (中略)
 和紙だけでなく「紙を買いに行く機会」が全体的に減っています。
 (中略)
 和紙にかんしまして私どもの頭を悩ませている問題はと申しますと,紙を使う教室を各種やっておるわけでございますが,洋紙系と和紙系それぞれ見ておりますと,和紙系の教室になりますと,どうしても年々,お客様の年齢が上がってくるわけであります。何とか若い人を入れないわけですが,それが難しいのです。洋物系ですと年代もさまざまで,20代の方もおられますし,子育てが終わって時間ができた主婦も多いわけでありますが,こちらのほうは,おかげさまで満杯の状況で待っていただかなくてはならないものもございます。

 そういったことが,私どもの店の中では非常にアンバランスなことがございまして,何とか和紙の方も引き上げたいなあと思っているわけですが,なかなか難しいというのが現実です。
 そして,もう一つは,情報の提供の問題でしょうか。ご年配の方はホームページを見ませんし,我々としてもあまり知らせる機会がないと言えます。40代ぐらいまでなら,ほっておいてもホームページ等でどんどん調べてきてくれるという動きがあるのですが。
 (中略)
 価格や原材料の話のところでも触れられましたし,昨今の食品偽装問題等の流れを見ておりますと,私ども紙を売る人間としましても,正直な商売していかなければならないと思うところであります。正しく情報を提供しようという姿勢を大事にしていきたいと考えております。

 先ほどの久保さんがおっしゃっておられましたが,産地の方々の多くが国産のものを使っていないと恥ずかしいと思っている人が,口でおっしゃられなくても多くいらっしゃると思いますが,「何何産楮何パーセント」ときちんと表示することで,お客様に正しくお伝えする。また,そういった素材が入ったほうが書き味が良いとおっしゃるお客様も実際にいらっしゃいます。用途によってはチギリやすくなければならないといったことが楮の紙などでは特にありますので,用途に合わせて原料の配合を知らせるのは当然と思っておりますので,よろしくお願いしたいと思っております。

 最後に価格の問題についてお話させていただきます。(中略)暴利でなければ品質保持のうえでも値上げはけっこうですが,消費者にとりましては,さまざまな価値基準がございます。値段が上がってしまうと使いづらいと思いますので,お客様のニーズに合わせて,原料等をアレンジして開発していただくべきだと思っております。(後略)

 

上村紙株式会社(楽紙館)・上村芳蔵氏

 

紙そのものの文化を
全面にだしていきたい

 

「私は上村紙株式会社の会長であり,楽紙館の館主といいますかオーナーであります上村芳蔵です。(中略)
 
 私のような流通過程の人間は紙を疎かにしやすい気もいたしますので,みなさま方の心を入れて販売していかなければならないと気を引き締めているところでございます。
 このたび楽紙館の5階建本館を建設いたしました。(中略)楽紙館そのものの考え方につきましては,京都という場所柄,文化を切り離すわけにはいきませんので,紙と文化,もっと言えば紙そのものの文化を全面にだしていきたいと考える次第です。
 (中略)
 紙と私たちの生活は切っても切れない関係にあります。それを踏まえまして,楽紙館の考えといたしましては,幸い京都には1200年の歴史があるわけでございます。ちなみに私どもは「都の音色」という登録商標を取りました。京都の歴史も文化も音色のように流れていく。そのなかで漉かれていった紙はどんなものであったのかということで,古代から平安時代になり,室町時代にあり,桃山,江戸と移っていく。その歴史をずっとつなぎながら,紙と文化のかかわりを組み合わせながら展開していきたいと考えています。
 
※楽紙館の説明(略)
1F:紙と京都の歴史にかんするスペース
2F:全国の和紙を展示・販売
3F:2000年紀和紙綜鑑の展示
4F:教室関係


 販売させていただく和紙の価格につきましては,値段の高低に関係なく,そのままの値段で販売させていただきます。海外製品はどこの国の紙がきちんと説明した上で価格を提示いたします。同じように,日本の紙については,こういった過程で漉かれた紙ですから,こういう値段になりますと説明して販売いたします。最終的には消費者の判断することであろうと思います。
 (中略)
 一時期は外国の紙は止めようかと思いましたが,世界の手すき和紙文化として捉えて売っていきたいと思っております。」

TAKIO TRADING・滝尾亮平氏

 

輸入紙のなかでも
プライドというものがある。

 

「どうもみなさんはじめまして。私は大阪のTAKIO TRADINGと申します。弊社は輸入紙を扱っておりまして,和紙というカテゴリーのなかでは肩身が狭いのですが,今回,会長様から声をかけていただいて,参加させてもらうことになりました。

 弊社は輸入和紙ということで,中国の書画紙つまり手すきの和紙や,韓国の楮紙を中心に扱っております。輸入紙という観点からも,今後は値上げということが避けられません。これまで中国製の和紙といえば消費者から安いというイメージを持たれていましたが,今後は高くなっていくであろうという予感がいたします。
 (中略)
 今回,この集まりに参加させていただきまして,日本の和紙の伝統等を尊重しながら,輸入紙の扱い方,たとえば表示の問題や,一つの価値感としてブランド力をつけていかないダメだと思っています。これまでのような安いというだけで,100円均一のような扱いを受けたのでは悲しいですし,輸入紙のなかでもプライドというものがありますから,消費者に気に入ってもらえるよう,今後も企画や提案をしていくのが大事だと考えています。この場で輸入紙が和紙と呼べるかどうか定かではありませんが,多種多様な手すき紙のひとつとして輸入紙の提案をしていきたいと思っています。

因州和紙・中原剛氏

 

和紙をとおして
スペインの美術学校と交流。

 

「因州和紙の中原と申します。新しい紙といって差し支えがないかどうかわかりませんが,これまでの漉き方は平面的に漉いていたわけですが,立体的に漉くことはできないだろうかと考えました。球面であったり,筒状であったり...シームレスの紙を考えました。
 それを使っての市場は主にランプシェードです。形もいろいろと変化しておりまして,谷口和紙さんが作られた瓢_型のランプシェードはグッドデザイン賞にも認定されました。
 (中略)
 それから10年位前からですけれども,青年部といいしょうか若手が中心になって和紙本来の作り方と申しましょうか,石灰や木灰を使って原料処理したり,さまざまな挑戦をしてきました。それについての成分分析をしたりしたのですが,成分表よりも,そんな製造過程を経てできたのかが,お客さんは知りたいようです。

 その紙が,たまたまスペインのバルセロナにあります,リョッチャ(llocha)という美術学校の先生の目に止まりまして,そこから交流がはじまり,スペインから三回ほど日本に来ていただきました。我々も二回ほどスペインに行き,紙の作り方についての交流をしました。最初はリョッチャ美術学校とバルセロナ大学の二校だったのですが,今年はオビエド大学とバレンシア大学,そしてもう一校は忘れてしまいましたが,合計で五校ほど交流ができました。そして.こちらから,こういう原料で,こういう処理をして,こういう人が作りましたという明細をつけて,提供いたしました。

 それを美術学校の生徒が,これは木版で刷りましたとか,石版で刷りましたとか,これはプリンターでやりましたといった形で,作品をこちらに返してきております。今年は100点以上が返ってきました。これを本当はずっと続けていかなければならないのですが,先ほどからいろいろお話がありますように,予算がないもので・・・規模を縮小するか,学校数を制限するなどして,今後送ってくる場合も,一校5点するなど点数を絞ろうという意見が出ておりまして,現在,調整中でございます。

 そういう試みをして,展示のときには,どういうような紙か必ず手で触ってわかるような展示をしてもらいたいということで,バルセロナ大学も作品の横には必ず因州和紙のサンプルを付けて,触ってもらう紙も展示してもらっています。

ボランティアスタッフ・矢部和仁氏(印刷業) 

 

ボランティアスタッフからの
メッセージ。

 

「突然で全然何も考えていませんでしたが,私は大阪の生野で父親の代から印刷業をやっております。
 (中略)
 生野では異業種交流会をやっておりまして,そこにたまたま和紙の問屋さんである小野商店さんの方がいらっしゃいます。そこで和紙とふつうの印刷加工をコラボレーションという形でやっていこうと,三・四年前から小さな三階建てのビルの一階の会議室を借りまして,最初は和紙でできたメモ帖を並べただけの展示でしたが,そこから徐々に和紙を使ったラベルでありますとか,そういったものを展示しまして,本当に一日数名なのですが,徐々に二年経ち三年経ちしますと,ホームページでも宣伝のおかげで来られる方もおられます。また徐々に和紙の注文も入ってきております。
 (中略)
 私が最近おもうことは,伝統の和紙の良さということは大事かと思いますが,エンドユーザーに合った和紙,それはロット数にしても価格にしても,伝統だけでは,やはり使われる用途が限られてくると思います。ですから作り手のみなさんと使う人達とコラボレーションしながら,新しいこと,たとえば,これまで洋紙でやってきたことを和紙で新しく商品を開発するとか,そういったことをすれば,また違った和紙の良さが出てくると思います。
 (中略)
 今回,こうして初めてボランティアという形で参加させていただいて,みなさんのお顔も十分に存じあげていない状態であります。が,これからも自分なりに和紙の良さを知っていただけるよう,インターネット等でも働きかけていきたいと思いますし,またこういった形でご協力させていただきたいと思いますので,これからもよろしくお願いします。

(株)加徳・加藤幸雄氏 

 

もっと良い商品を取り扱いたい。

 

「京都の加藤と申します。紙にもいろいろありますけれども,内装材,表具,障子紙,みなさまに提供させていだたいております。

 昨今は値上げもさることながら,商品そのものの質もだんだん悪くなってきております。私どもは内装材のほうでみなさまから製品をいただいておりますが,まだまだ良い商品が欲しいのです。京都で商いとしておりますと,地方の方々とも交流がございますし,どうしても京都が,そういった素材の発信元になってきます。京都に良い商品や情報を集めたいです。

 私どもも自然や健康をうたい文句に商いをしております。何かの形でご協力できることがあると思いますので,その節はよろしくお願い申し上げます。

全和連理事・中北喜得氏 

 

私たちは各産地で
それぞれの文化を創造している。

 

三重県伊勢市にあります大豊和紙工業の代表をしております中北喜得と申します。先ほどの加藤さんのお話を踏まえまして,今の時代に必要とされることが伝統の本質だと,私は思うのです。新しい紙もそうですし,これまでの伝統的な和紙もそうなのですが,それらは,それぞれの時代で支持をされ使われてきたからこそ,今日,伝統として認識されているわけです。ですから,新しい物と伝統的な物を分けて考える必要は全くないのです。

 必要とされることが伝統として引き継がれていくわけでして,今のように良い紙が欲しいとおっしゃる方には良い紙を届ける。もっと安価で使いやすい紙が欲しいという方には安価な紙を届ける。そういったことが伝統であると,堂々と自信を持っていえばいいのではないかと,私は思っております。

 文化と科学というお話もありましたが,文化ということは,そもそも生産をするこということです。太古には自分が使うものは自分で手に入れるしかなかったわけですが,その後,人々がそれぞれ違った物を生産して交換するような社会が生まれました。そこからしか文化は生まれないわけですね。

 誰かが違ったものを作っていて,あれが欲しいなこれが欲しいなということ自体が文化なのです。ですから,私たちは各産地でそれぞれの文化を作っています。それが生産そのものなので,紙を作りだすことが価値を生み出し,その価値を交換すること。そのことが社会のなかで文化を作り出すことなので,それは科学的な根拠は当然必要です。けれども,作っている紙と文化を切り離して捉えるのではなく,作っていくことそのものが伝統であると,私は思っております。

 ともかく自信を持って作り続けていきたいと思っております。以上です。

 

 

全和連副会長・房安光氏 

 

一番中味の濃い研修会でした。

 

「昨日に続きまして,本日も大変,長時間,熱心に議論を重ねていただきました。司会者の方が申しておられましたが,本当に実りのある議論ができたのではないかと,私自身も感じておるわけでございます。

 昨日同様,今日も〆をしろということで,〆が専門の副会長になってしまうわけでございますが(笑),研修という形では,今年,京都で三回目ですね。私の思うところでは,今日のこの場が,一番中味が濃かったかなと。濃すぎてみなさんの思いが身体の中に満ちてるといった感じなのであります。

 若い人や一生懸命やっておられる人達の話を聞かせていただきましたし,最後に中北さんがおっしゃられていましたように,伝統というのは今必要とされているからこそ伝統なんだと。締めくくりとしましては,非常に名言ではなかろうかと思いましたし,原料を作っている人,紙を作って商っている人,紙を使っている人・・・それぞれの方々に良い発言をいただいたと思う次第であります。
 (中略)
 また来年もこういう形で,さらに発展した形でみなさんにお会いできることを祈念いたしまして,今回の「和紙フォーラム2008 in Kyoto」の研修会を終わらせていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。」


 ※一同拍手喝采。次回は鳥取での開催予定です。

 


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