第二日目/第二分科会(於:アスパ アカデミーホール)

 第2分科会(座長:美濃)においては,以下の各項目について活発な意見交流が行われました。
   技術者と後継者の育成
    1 各産地の伝統技法の保護
    2 技術者と後継者の指導者の確保
    3 技術者と後継者の育成施設と経費
    4 製紙技法と工芸技術
    5 産地見学と体験学習

 


第2分科会(技術者と後継者の育成)報告書 (座長 岐阜県美濃)

 



[討議内容概要]

7府県の産地の従事者による分科会となり、各産地の立場から後継者の養成等について報告と意見をいただいた。結論を導き出すといったことではなく、自由な意見交換を進めた。順に各産地からの発言内容の概要を報告する。

 

産地A
20年程前に、当産地では家業を継ぐといった形での後継者が生まれなくなったことを踏まえ、外郎から研修生を迎え入れるようになった。これまでに迎え入れた研修生は10数名となっている。受け入れ先は産地の各生産者であるが、産地の存在する市(行政)が条例を制定し研修生に対して支給する奨学金制度を設けたことが大きい。月額5万円を2年間の期間限定で支給し、研修生の研修活動や生活の支えとしてきた。研修生の殆どが産地の地域外からの移住者であり、和紙生産の基盤を確立することは困難であるが、研修終了後の活動を支えるため、中心となる和紙会館に加え研修施設を設置して研修活動の継続を支援してきた。若手研修生にとって、和紙の生産、販売営業等を軌道に乗せることは時間のかかることであるが、初期の段階での行政からの支援は研修活動に大きな効果があったと考える。和紙生産者だけでなく、用具生産の研修生もその対象となりてきた。

産地B
産地での後継者の養成活動は、地域内にある道の駅内にある施設などを利用して行われている。産地は都市部にある芸術系の大学と連携し、大学の授業とも関連付けて研修生の養成に結び付けている。産地と大学との交流による研修活動ではあるが、課題として学生側と産地の地域との交流がまだ十分でない点があげられる。


産地C
産地としてというよりは、民間企業1杜による構成で会社組織として運営している、後継者養成は会社の運営の中で、会社の業務の一部として行われている。産地見学として、観光パスが来訪することもある。見学希望者は紙漉きにはとても興味を持ってくれている。

産地D
かつては100戸以上の生産栗者があったが、現在は小規模なものから大規疫な業者まで様々ではあるが50〜60戸の構成で産地を形成している。製品が売れない、需要が無いために転業を余儀なくされている生産者が多くなっている。その一方で新たな分野を開拓し、新規の商品開発などを通じて業績を上げている企業もある。そういった企業では若い従事者も育っている。行政の支援も十分ではないように感じている。また、外部から受け入れた研修生の中には10年程勤めた後に、理由は様々だが辞めてしまう例が多く見られるようになった。家業を継ぐ形での後継者は継続してくれている。研修生が研修を行う施設や設備は十分にあると考える。産地見学や体験などを行う施設も整備されている。学校での教育活動に力を入れていくことも必要なことと考えている。

産地E
Uターンした後に、家業を継ぐ形での和紙生産の後継者として働いている者もいる。若手の生産者といっても殆どが40歳以上である。産地見学、観光施設、研修指導は県および市町村(行政)が設置した機関や補助金で整備した施設を中心にして行われている,補助金で整備した研修施設では、年に4〜5名程度の研修生を受け入れて研修活動を行ってきた。原材料や宿泊施政なども準備して、生産設備等も含めて充実している。地元の生産組合と町(行政)によって運営している。研修生の中には独立して生産者となった者もいる。研修生の立場から、組合貝となってもらうことで、仕事とともに責任を持ってもらうようにしている。研修生と地域との繋がりが大切なのではないかと考えている。生産者の殆どが小規槙の家内工業中心であるが、若手従事者の場合、生産活動と流通、営業といったことを十分に進めていくことは困難なことである。リーマンショック以降、廃業する生産者が増え、産地として実質稼動している生産者は10戸程度ではないだろうか,

産地F
所地としては一戸で生産を続けている。研修聚の受庄入れでは数年前に他県の同業者から1名を受け入れたことがある。現在は実家に戻っている。研修を希望してくる間い合わせは稀にあるが、指導および研修を行える状態にないため断った上で、他の産地での研修を勧めている。見学対応や紙漉き体験などの事業もかつては工房内で無料にて行っていたが、現在は近くの道の家に設備を設けて行ってもらえるようになった。学校教育などを通じて子供たちに和紙のことをさらに理解してもらうことが、今後も必要と考える。同じ県内でも他の業種で認知度、生産高ともに大きな存在の業界があり、県はその業界に力点を置いているように感じる。和紙にまでは十分に対応できていないのが現状だ。

産地G
3年程前から近くに大学(専門学校)が設置され、連携を進めている。廃校となった小学校跡地を利用して研修施設を設置している。以前から産地の組合は研修施設を整備しており、研修生はその共同作業場を利用して研修を行い、産地組合から仕事をもらっては生産活動を行っている。研修生が生活を維持するためには、アルバイトなどを行うことが必要となっている場合もある。開校した専門学校では学生が卒業後、仕事を進めていく必要があるが、経営や原材料の確保など様々な課題があると考える。見学、観光などの面での設備は揃っているが、生産者の増加にどのように対処していくかが大きな課題と考える。

産地H
産地の住民が仕事を覚えて、産地を支えようと努力を続けている。国産の原材料の不足が心配である。1年目は紙漉き、2年目は和紙加工品などの製作の作業を研修する。希望があれば3〜4年目も行えるようになっている。

大学生(専門学校生)
学校の授業で和紙の生産を学んでいる。今回のような生産者と意見交換できる機会は貴重なものと考える。他の産地についての情報を得ることが難しいことが残念である。原材料など和紙生産に関する情報が欲しい。インターネットなどでも情報が得られるようになることを望みたい。

 

 

美濃手すき和紙共同組合 長谷川 聡

 


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