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【染紙】
あらかじめ原料を染めて漉く紙、染料に生漉き紙をひたした浸け紙、刷毛染などの手法で、草木染や顔料染をおこなった無地の紙を染紙としました。昔「仏を中子と称し経を染紙と称す」と言われましたが、写経用紙の大部分が黄蘗(きはだ)染(黄)か、櫟(くぬぎ)の実を使って黄茶色の染紙を使ったからです。黄蘗染は、仏教で使われる色であるだけでなく、虫がつかないので多く使われました。
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小出和紙のくるみ染 |
原料は「くるみ」の実のむき殻です。秋、採取後、皮を乾燥させ保管しておき、それを煮出して染料液をつくります。媒染剤は使用しません。液の濃度は紙により加減します。他は、他の染料と同じです。科学染料などでは決して味わえない真に美しい紙です。 |
吉野和紙の草木染和紙 さくら |
秋に桜の樹皮を削り取り、しばらく陰干しをし、よく炊き出し、灰汁で色止めをします。樹齢によって色合も変わるので難しいところです。その染料で楮を染めて漉き上げた紙で、書道をされる方々に愛好されています。吉野の地名にふさわしい草木染さくら和紙です。明礬を媒染剤として利用すれば、もっと黄味の色に染め上がり、また鉄分を応用すれば鼠色に発色します。 |
出雲民芸紙 |
原料の楮はソーダ灰で煮たもので、つきうすで150回程度ついて染めやすい長さにします。油煙をねりあわせ、水で薄めて染料液をつくります。水がめの中に楮を入れ、少しずつ手でまぶしすようにかきまぜながら染料液を入れます。よくかきまぜた後、一枚ずつ紙を漉いていきます。染料液の濃度が濃いとトロロアオイが分解して紙漉きができません。ころあいの難しい紙です。紙は変色せず、書物の装丁、室内装飾に用いられます。 |
斐伊川和紙の紅柄染 |
紅柄というのは赤い色の酸化鉄で、インドのベンガル地上の赤土が良質の赤い絵具(インデアン・レッド)として名高いので、この種の赤色酸化鉄のことを一般にベンガラとよんでいます。実際には黄土を焼いて作っています。江戸時代から斐伊川の中流奥出雲に、斐伊川和紙が伝統の手法で漉き出されていました。この伝統の中で退色しにくい紅柄和紙は生まれました。7年前から試みた1m×2mサイズの紙(雁皮紙、楮紙7色)は、ダイナミックな漉き方ができるため、より丈夫で美しい紙となり、また、紙をついで貼る必要(それまでは60cm×98cmの紙を3枚ついで貼っていた)がなく、襖、壁紙に使われています。作り方は、三椏の黒皮を包丁で一本一本はぎ白皮にし、ソーダ灰で煮熟、臼でつき、トロロアオイを加え紅柄をよくこなして漉きます。乾燥は板干または鉄板干。強靭で長期保存に耐えます。 |
阿波和紙の藍染和紙 |
特産の阿波藍を用いて染めた「藍染紙」は、阿波和紙を代表する紙のひとつです。藍液に浸すことと空気中での酸化を繰り返すことで色目の濃度が増すのが特性で、その調節により、淡い空色から深い紺色までの藍の色目を生み出します。藍の強いアルカリ液に耐えうるには、あらかじめコンニャク糊を塗布する必要があります。阿波の者にとって最もなじみのある藍の色、そして強くしなやかな風合は、阿波和紙が誇れる一品なのです。 |