【漉き込み】
雲龍紙、チリ入り紙などの漉きこみ紙が漉き模様紙と異なるのは、型紙、金属、他の技法などを使わずに、生漉きと同じ漉き方で紙料、ネリの調合、簀桁の動かし方で、簀の上の水と紙料の流れが、偶然の変化を生み出すもので、2枚として同じものはできません。流し漉きの産地ではどこでも漉いています。
《雲龍紙》あらかじめ叩解する時に残しておいた長い繊維を表面に散らして漉き上げます。
《チリ入り紙》チリ入り紙は、もともとは叩解の難しい粗悪な原料で漉いた紙ですが、民芸調の装飾的な良さが見直されて、通常の漉き方にネリを濃いめにきかせ、黒皮をまぜて加飾性のある紙を作るようになりました。チリ入りとか皮入りとか、産地によってよび方が違います。
その他いろいろな植物を混入して特徴を出すことができるのは手漉きのみの楽しい世界です。


楽水紙
三椏を原料としてノリウツギのネリを加え、海藻あるいは川苔を混入して漉いた襖障子用の紙。玉川堂(川崎市多摩区中野島)の六代目田村佐吉が、明治初期、熱海雁皮紙の紙面に混入していた海藻を見て思いつき、三椏原料に海藻(カモジ、シマダ)を混入して創製したもので、彼の雅号「楽水」を紙名にしました。彼の子、綱蔵は東京巣鴨折戸に楽水紙専門の工場を設けました。襖紙として好評を博し、麹町や下谷にも同業者が生まれました。明治末期には、故紙を原料とする大衆向けの楽水紙を新楽水とよびました。この新楽水が高松や東京でも製造され、これには高知県四万十川の川苔が使われ、襖紙の主流は新楽水紙であったといいます。
越前和紙の有馬紙
越前の名紙匠の先代岩野平三郎が、道端の水車小屋に乾かしてあるそばの薄い三角形の皮を見て、面白いものになると一袋もらって帰り、早速挽臼で粉末にして原料に混ぜ、襖一枚張りに漉いたところ原料との調和がよく、よい味になりました。襖紙、茶室用として好評でした。なぜ有馬紙というのかは不明。金砂子と一緒に漉きこんだものを有馬金潜紙といいます。ふるいにかけて大きさを整えたそばがらのチリの上に、薄様紙を上掛けして仕上げる点などは、いかにも越前らしく洗練された手法で、上品な高級チリ入り紙とよべるでしょう。
吉野和紙の楽水紙 川苔入り
奈良の国栖(くず)の地では苔の採集地と時期が定まっており、吉野川のきれいな流れの清水の苔がよく、たまり水などよごれた水の苔はのちに変色するので、不適当であるといいます。現在、福西製紙所で漉かれています。
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