06.11.21up

高志(こし)の生紙便第11号が届きました。一部をご紹介します。
 
長月
我が家の稲刈りは、九月十八日、台風の影響で三十五度の猛暑の中行われた。小生などはランニング姿、稲穂で肩から腕までいがっこいよりヒリヒリ状態。
例年通り、弟家族も含めて四歳の生真まで家族総出とこの高柳でも珍しい風景になってしまった。機械化が進むと子供はかえって邪魔になる場面が多い。すべてが手作業だった昔のような猫の手も借りたいくらい、一束一束運んでくれるだけでも助かる。子供の存在感があった頃が懐かしい。
食べ物に心から感謝する心を子供が感じて育つことも大事かと、田植も手植え、稲刈りはバインダーを使うが、手刈りの部分も残してある。ハサに掛けた後の落穂拾いは昔から子供の仕事。その後半粒の米も残さないようになった。

孫四郎(小林の屋号)一家の
稲刈り(9月18日)

孫四郎(小林の屋号)一家の
稲刈り(9月18日
農学部に進んだ倅もこの日だけは帰ってくる。年老いたお袋が孫に向かって「大学の稲刈りはいつでえ?」と尋ね「大学って所は、手刈りもするがんか?イナモジリ(稲を一束に縛る方法)の仕方も教えてくれるんか?」と尋ねる。倅は苦笑いをしていた。
考えてみれば、農業は「業」が付くのだから産業の一部、そろばんがいつも付きまとうけれど、お袋は、百姓で生きてきたからその大根が一本十円だろうが百円だろうが関係ない。
自分が食うだけ取れればそれでいい。百姓学校というのがあれば、お袋の言う「イナモジリ」も教えるであろうし今の時期、昔なら籾殻をたくさんいぶして、村中煙だらけのクンタン作りに精を出している。このクンタンの焼き方も教えるであろう。クンタンは稲のすじ(種)撒きの後、保温のため振りまく必需品。また春先の雪面にも振りまき消雪にも使う。また、糠釜を使えば二升の米もカナミ三杯もあれば無事焚き終える優れものだ。
近年、ものすごい勢いでこの日本から懐かしくも美しい日本の農村の豊かな技や心の文化が姿を消して行く。消え行く理由がそろばんだけとしたら恐ろしいことだ。豊かな心を育む元が「自然」であってみれば、全国に一つや二つ位クンタン作りから「イナモジリ」の方法を教える専門の大学があってもしかるべきではないかと僕は思いを巡らす。この高柳地区には、年老いた教授が今なら残っている。
柏崎市と合併して一年半、だんだん不満の声が小さくなってきた感がある。旧柏崎方式に慣れてきた面もあるだろうし、あきらめモードに入ってきた面もあるだろう。全国でも珍しい「自治区」を設定し独自性を維持することが柏崎全体の力になるはずなのだけれど、どうやら行政の事務レベル段階ではそうは思っていないようだ。旧柏崎方式を常に指導されている感がする。考えてみれば、今までのマニュアルをこなして行くのが事務職の当り前というもの。それに対して、我が地域協議会も初めてのことでもあり、どのように力を発揮したらいいのか戸惑っていた一年半だった。
そもそも一年間は、その新しい仕組みの様子もわからないのに独自の活動は慎むべきとも考えていた。しかしここにきて少しずつ良い点、変えた方がよい点が見え始めてきた所である。高柳らしきを残すためにおぼろげな問題の根を少しずつ明確にして議論し、今こそ住民の中に入って地域協議会はリーダーシップを発揮しなければならない。そのためには、協議会自身が「お知らせ版」ではなく「生」の意見を出し合い「協議会便り」を発行しようではないかと提案したところ、事務担当さんからは「委員の皆様は市長の諮機関でもあり、それは許されていない。」という趣旨の説明があって、自分としては江戸時代に取り残された気分で、それならば個人の資格で同志を集めてやると食い下がった。
勿論、その事務担当の人を個人的に憎い訳でもないし、むしろ自分にはないすばらしい能力の持ち主でもあり敬意を払っている面もある。要は育ってきた環境の違いからくる意見の違いかも知れないとも思っている。
ただ蓋をしておいたのではいつまでも解決しないし、今後もお互いがハッキリ話し合いを続けるより仕方ない。いずれにしろ、ここ一、二年の間に高柳自治区が、自治区らしく心を一つにしてコンセンサスを得ながら、高柳らしさをさらに補強し、新しい柏崎全体の利益に繋がるよう、発奮せねばならない風が確実に流れているようである。
神無月十日
小林康生
「高志の生紙工房」からのお知らせ
【見学、製品ご希望のお客様】
○見学(説明)は無料です。(団体でお越しの場合は事前にご連絡下さい。)
○説明の所要時間は30分程(門出和紙のできるまでのビデオ15分含む)
○最初に工房スタッフに申し出てください。係りの者がご案内申し上げますが、作業の都合等により即対応できず、しばらくお待ちいただくこともありますのでご了承下さい。
○当工房は生産施設でもありますので、道具や原料、製品等には触れないでください。
また、作業中のスタッフに話しかけることもご遠慮願います。

【体験プログラムのご案内】
○体験は前日までに申し込んでください。(団体の場合は早めにご予約下さい。)
プログラム 詳  細 所要時間 料  金
紙漉き
(10枚以上から受付)
半紙判(39cm×27cm)便箋2枚
取判(伝統製法による素材としての紙作り)
約40分 基本料金3,000円+300円(1枚)
他 送料実費
紙流し
(5枚以上から受付)
半紙判の網枠に和紙原料を流し込む(草花を入れるなど作品としての紙作り) 約30分 1枠(1枚)500円〜
他 送料実費
折染め
(10枚から受付)
お買い上げ頂いた和紙を折りこんで染液の中に浸し染にします。(染めた紙は当日お持ち帰りができます。) 約40分 紙代 菊判(92×62cm)500円〜
基本指導料(染料代含む)御1人様300円

※紙漉き、紙流しの紙は、乾燥して後日発送となります。送料実費を含め請求書を同封しますので、郵便振替払込用紙にてお支払お願い致します。


○○○ 生紙工房の開館時間と休日
午前9時〜午後5時まで
(正午〜午後1時まで休憩)
休館日は第3日曜日と祝日


「生紙工房」と「生紙便」に関するお問合せは下記まで
越後門出和紙 小林康生
〒945-1513
新潟県柏崎市高柳町門出
Tel 0257-41-2361
Fax 0257-41-3024
メール info@kadoidewashi.com
URL http://www.kadoidewashi.com
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