07.07.20up

高志(こし)の生紙便第14号が届きました。一部をご紹介します。
 
水無月

山々は、ますます緑を深め斜面の所々に白い花を咲かせているのは山ボウシである。四枚の大きな花びらだからすぐに分かる。この花はやがて薄桃色の実を付ける。イツギダンゴの実といって、子供の頃は、競って仲間と山に分け入ってほおばったものである。甘くて面白い匂いがした。
高柳地区で見られるのはすべて白色なのに、小国方面は所々淡い紅色の花びらもあって、土質のせいかよくわからないが、ホタルブクロの花などにも見られる。
今年もまた、門出かやぶきの里から歩いて五分くらい、私の母が生まれ自分もそこで生まれた倉下では、源氏蛍が沸くように飛び交っている。あまりに見事なので家に帰り、母、女房、子供を連れ出して暫し眺め見る。この地で育った母でも「子供の頃から見ている蛍だけど、これだけの源氏蛍は初めてだ」と驚いていた。小さな川筋沿いに、明かりの筋ができてしかもその規則正しい点滅が、道路工事の点滅を想像させるくらい見事でまるで軍隊のようである。

カジノキ(山コウゾ)
赤い実は甘い。
米粒ほどの平家蛍はか弱く、点滅も不規則で気まぐれであるのに比べ、大麦ほどある源氏蛍は迫力がある。高く舞い上がる様は、星と見間違えることもあり、見垂れて、蛍になったという人がいたけれど、自分もそう思う。蛍は熱し発しない明かりとしてとても珍しいのだそうだ。そう言われてみれば暖かみのない明かりで冷たい明かりでもある。美人の明かりとでも申しましょうか。不気味な明かりにも見える。焚き火やローソクの明かりとは違い、星に近い明かりで、人から遠い宇宙に繋がっている明かりである。
近年ちょっと気になることがある。それは子供らしい子供が少なくなり、子供のような大人が増えている気がする。それはそれだけ自分が年をとったせいで片付くならめでたい話ではあるのだが、子供らしい行動の原点は感動や想いを顔に表し、いつも走り回っている姿である。知的である前に感覚的行動パターンが僕のイメージである。大人ともなれば、その逆で建前が前面に出て、マナーもそこそこ確率した人物である。時代と共に他社に世話にならずとも、そこそこ暮らしが成り立ち、気遣ってもらうこともわずらわしい、気遣うことはもっとしんどい。一人気ままにさせてもらいたいと願うことは当然のことであろう。
わがままに生きることは、大切なことであると自分も思う。ただ自分勝手は許されない。自分が勝つことは負ける人がいることである。
小林康生

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越後門出和紙 小林康生
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