05.08.02up

「季刊・和紙だより 2005夏号」発行
福井県和紙工業協同組合から、「季刊・和紙iだより 2005夏」号がとどきました。
今号の「越前和紙への提言」はフィンランド生まれの木版画家トウーラ・モイラネンさんです。日本の和紙に対する外国の方ならではの興味深い提言です。一部をご紹介します。


今号の内容

■越前和紙への提言
トウーラ・モイラネン氏
「本物の和紙を直接購入できるルートが欲しい」
■ショップレポート
大阪・からかみ屋
■イベントレポート
素の紙展
■イベント情報
■越前和紙への提言 トウーラ・モライネンさん(木版画家)
版画家。1959年、フィンランド生まれ。カンカーンバー美術学校版画学部卒業後、ユバスキュラ大学人文学部卒業、芸術教育、哲学と美術史で修士号取得。
ユバスキュラで、版画、美術史、芸術教育に携わる。1987年来日し初めて日本の紙漉に出会う。以来、わしの研究を続けながら、京都にてデッサン塾を主宰し、各地で展覧会を開催。和紙や木版画を海外に紹介する本をフィンランド語、英語で出版している。著書「The Art and Craft of Woodblock Printmaking」「Kirjansldonnan Opas..手製本入門」など。


●和紙との出会い
日本に初めて来たのは1978年です。埼玉の小川町で初めて日本の紙漉を見ました。その後、89年に再来日し、ここ京都に居を構え15年ほど経ちました。私は17才から木版画をやっています。23才の頃日本の浮世絵木版画と出会って、その技法を勉強のためにまねしてみようと思って外国の本を調べたり、水彩絵の具を工夫したりしましたが、一番最初に突き当たった壁が、紙でした。その当時は、フィンランドでそういったことを詳細に書いてある本もなかったのです。私の町で売っている手漉きの紙も、本物の天然素材かどうかは解りませんでした。それでも、紙の切れ端を切り刻んで、自分で水に溶かして、何とか自分で漉いてみたのですが、刷ってみると全部ダメでした。卒業論文に日本の現代木版画を選んだのですが、何しろ資料がないので、日本に行き、本格的に木版画のことを勉強したいと思って三週間の旅をし、小川町に連れて行っていただいたのです。
●本格的な紙の勉強
小川町で紙漉を見たときには、本当に興奮しました。ああ、こんな風に漉いていたのか、こんなトロトロしたものを(トロロアオイ)混ぜるのか、と驚きの連続でした。東京芸大など日本の芸術大学も随分回って、紙と木版画の資料を集めました。
(中略)
●海外から直接購入できるルート
フィンランドで和紙を売っているのは大きな町だけですが、ドイツ経由で入ってくるようです。手に入るまでの間に問屋が何軒も介在するので、産地が解らなくなります。ただコウゾが入っていれば「コウゾ紙」と名前を付けているだけで、怪しげなものもあるのです。私はどこの紙か産地で判断すればある程度解るので、英語で産地の名前、出荷した組合の名前、材料やその紙にまつわる豆知識のようなものを付けて欲しいのです。北欧では版画が盛んで、版画教室も多く、アーティストも多いのですが、問屋を何軒も経ると、、北欧は消費税が28%ですので、紙も大変高くなります。大きなロットではありませんが、教室単位で直接注文できるような和紙組合などがあると大変助かります。組合などに輸出入の知識のある英語のできる方が一人でもいらっしゃると、可能ではないかと考えています。和紙は今や国際品で海外には大勢ファンがいますので、少しずつでもいいからそういうことを始めていただきたいですね。高い紙になると、普通の人には買えないので、安い紙しか手に入らなくなり日本の和紙のように高い紙を知る人も少なくなります。力のあるアーティストも、質の悪い紙を使っていては、総体として作品の質が落ちます。芸術家にとっては深刻な問題なのです。
●レンタル紙漉き工房
外国人のために、紙の体験ツアーなども企画して欲しいです。観光だけではなくて、一週間くらい滞在して作品を作れるような場所も産地に欲しいですね。お仕事の邪魔をするのは申し訳ないので、英語のわかる紙漉インストラクターが一人いて、受け入れ専門の施設で和紙を学べるような所です。また、私などは自分の好きな紙を漉ける場所が欲しいので、レンタル紙漉工房のようなものは作れませんか?紙を煮る場所、漉く場所などがあり、道具も揃っていて、漉いた紙に試し刷りをしてみたりできると最高ですね。こういう施設があると、プロや外国人に限らず国内の学生なども口コミで伝わって広がると思うのですが・・・。

■イベントレポート
素の紙展
会場 今立町 卯立の工芸館
2005年3月30日〜4月18日、福井県今立町の卯立の工芸館にて「素の紙展」が開催されました。この展覧会は、健康的な自然素材、和紙を現代的なマンションやモダン住宅などに積極的に活かして頂きたいと企画したもので、紙漉職人10人、28種類の和紙が展示されました。展示された和紙は、住宅の壁紙や襖に使える大判のもの、照明やタペストリーなどインテリア用品に用いるもの、小間紙や印刷に対応したもの、美術の複製に使われるものなど、多彩な越前の紙をあえて素材のまま展示し、紙のもつ迫力や繊細さを感じとっていただけるものとなりました。
(中略)
近年、和紙を扱って住宅やモノ造りをする職人が減っており、一般ユーザーが本物の和紙にふれる機会は余りありませんが、展示会を訪れた人の中には、今すぐにでも住宅やインテリア、身近な小物に取り入れたいと考えている人が多いことには驚かされました。和紙の需要は減ってきていると言われていますが、それは「需要がない」からではなく「ユーザーが和紙を知らない」「専門家が和紙の扱い方を知らない」という事に起因することも多く、産地では今後も様々な視点で本物の和紙の魅力を発信し、和紙と触れ合える機会を作っていくつもりです。

発行人:福井県和紙工業協同組合 長田昌久
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