05.10.28up

「季刊・和紙だより 2005秋号」発行
福井県和紙工業協同組合から、「季刊・和紙iだより 2005秋」号がとどきました。
今号の「越前和紙への提言」は建築家の丸谷博男さん。建築家として和紙への取り組みを語ってくださっています。一部をご紹介します。


今号の内容

■越前和紙への提言
丸谷博男さん(建築家)
「体験型ワークショップでユーザーにワイワイ言わせる」
■ショップレポート
唐長
■漉き場探訪
沖桂司さん
沖水彩画用紙製造所
■イベント情報
■越前和紙への提言 丸谷博男さん(建築家)
建築家。1948年、山梨県生まれ。世田谷区代田在住。(株)エーアンドセントラル/NPO梅ケ丘アートセンターフェローシップ代表。建築家として活躍する一方、三十年間「建築とまちづくり」誌の編集に携わる。本物のものづくり、人間の元気を作るまちづくりと施設づくりを参加の手法であるワークショップを通して広める活動を行っている。拠点となる梅ケ丘アートセンターでは、手仕事のすばらしさを伝えるギャラリー展示の他、全国の地場産地の人々とユーザーとの交流が絶えない。

梅ケ丘アートセンターにてお話を伺う。
●唐長さんとの出会い
私が和紙と関わりを持つようになったのは、30年位前、建築雑誌の編集をやっていて、京都の唐長さんを取材してからのことです。見開き4ページの記事作りでしたが、その時伺ったお話が大変興味深かった。
一つは、小さな版木を連続させることで精度の高い模様の印刷ができ、それが職人技でまだらにならず一様にできるということ。もうひとつは、長い時間を経て生き残ってきた文様が「デザイン」なのだと感じたことです。個性を主張する「絵」ではなく、抽象化されたものであるが故に、誰もが愛しやすく、モダンで、しかも組合せが無限なのは「デザイン」そのものなのです。
15年経って、アートセンターを開設したときに、唐長さんの六百版の版木を世の中に出して見てもらいたくて、毎年百版ずつ見本帳を作っていただいたのです。二十部刷り、135,000円という高いお値段でしたが、最終的に五百版の見本帳を作ることができました。
●梅ケ丘でのアートフェスティバル「和紙ののれん展」
唐長さんをきっかけに、ギャラリーでも積極的に和紙を取り上げるようになり、越前和紙、茨城県の西の内和紙等の産地の方々とお付き合いするようになりました。西ノ内和紙の菊地さんの所では、その後、服にも使え、洗濯にも耐える「強制紙」というのを教えていただきました。
昨年、地元小学校と共に開催した梅ケ丘アートフェスティバルで「和紙ののれん展」をやったときに、雨に濡れてもいい和紙として地域の人々に伝えることができました。
この催しは、梅ケ丘地域のために、のれんのデザインを全国公募し、思い思いに漉いた和紙でのれんを作り、街の中に展示してもらおうというものでした。土佐、越前、小国和紙など産地の方も協力していただき、40ヵ所に個性あふれるのれんが掛かりました。
私の町にはなんと、漉き場があるのです。世田谷区が「和紙大学」というのを運営していまして、地域の小学校では自分の卒業証書を和紙で漉いたり、母親たちも和紙制作に取組んだりしています。のれん展に参加した主婦や子供たちは大感激していました。梅を漉き込んだり、お店のイメージを和紙に描いたりして様々なのれんを作りましたが、お母さん達のセンスが殊の外良かったのには驚きました。世田谷区のやっている和紙大学の卒業生と、メキシコの作家たちの作品の展覧会をメキシコで開きました。和紙のネットワークが世界にまで広がっています。
(中略)
●ユーザーにワイワイ言わせる
私は、建築家ですから様々な材料やデザインを実験してみる場がありますし、ギャラリーを運営していることで、そういった情報を発信していける場もあります。そこに来てくれるエンドユーザーやお施主さんはその情報を受け取り、又新たな手仕事や伝統工芸などの良さを体験を通じて感じ取っていただけます。地場産業は、新しいことをやるのに大変腰の重い所がありますが、エンドユーザーが面白がってワイのワイのと言っていると、産地の方もそんなものかなあと動き出すものです。産地活性化には、そっちのほうが返って早いかもしれませんね。

■ショップレポート
唐長
「伝統の文様と技術を変えず、京都らしく」

唐長の創業は寛永年間、1624年。版木に種々の絵の具を載せ、その上に和紙を当て模様を写し取る。現在まで使い続けてきた版木は650種類。380年間、時を経て作り続けられてきた「京からかみ」は、その完成度の高さで時の粋人を魅了し続け、現在でも桂離宮や名刹の寺院、茶室の襖などに使われている。雲母(キラ)や絵の具を使った美しい文様は、公家好み、寺社好み、茶方好み、町家好みなど範囲は広く、日本の文様デザインの原点と言えるだろう。これらの文様は1870年代のヨーロッパの壁紙にも少なからず影響を与え、イギリスのキュー・ガーデン博物館、ビクトリア・アルバート・ミュージアムには唐長の当時の紙が当時のまま収蔵されている。十一代目当主、千田堅吉さんに修学院離宮近くの工房でお話しを伺う。
●本物だけを、求めている人に
唐長の紙は、和紙を染め、代々受け継いできた版木で模様を付ける。400年もの間使い続けている650種類の模様は様々な時代を経て生き残ってきたものばかりである。模様のパターンも付け足さない。昔からの技法も絶対に変えない。現代はいわばインスタント時代で、同じような模様であるならそれでもいいという建築家やインテリアデザイナーも多いが、唐長は頑なに伝統を守ってきた。そういった特殊性を守っているからこそ唐長なのだと千田さんは言う。時代に逆行しているかもしれないが、リーダーシップを握り、無理なく長く継続していける仕事を通じて、本物を求めている人だけにこの「京からかみ」は提供される。
(後略)

発行人:福井県和紙工業協同組合 長田昌久
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